暗躍編01

草木も眠る丑三つ時―

深夜帯の繁華街は一部を除いてすっかり灯りを落としている。
人気のない裏路地に、酔っぱらっているサラリーマン風の男がひとりフラフラと歩いていた。
「ばっきゃろぉ~、平日がなんだってんだ!」
ひとり管を巻く酔っぱらいは、電柱に軽くぶつかり尻もちをついた。
何とか立ち上がろうとするが、おぼつかない身体で立ち上がるのは困難だった。
「ん?んだぁ?」
ただならぬ気配に、男の顔は青ざめていく。
ザワザワと人の声が聞こえる―否、ここには人影はなかった、はずだった。
「やぁ」
若い男の声が聞こえる。男はヒッ…と、小さく悲鳴をあげた。
パーカーのフードを被った奇抜な衣装をした若い男は、口元をニヤニヤしながらすっかり酔いが覚めた男に近寄る。
「な…何だ、あんた…」
「いやぁ、そんなに怯えなくてもいいんですよ」
酔いが覚めた男はすっかり腰を抜かし、恐怖に怯えながら若い男を凝視している。
正確には、若い男の背後の”化け物”に恐怖を覚えていた。

若い男は”化け物”―『鬼』という存在が背後にいながら全く怯える様子を見せない。
そして若い男は、目の前で怯えている男にこう告げる。
「なぁに、餌になるのは一瞬ですから」
パチンと指を鳴らした瞬間、声にならない悲鳴をあげながら男は程なく絶命した。
ぺちゃぺちゃと音を鳴らしながら黒い塊は、死体をひたすらに貪っている。
「んー…悪くはないんだけど、惜しいなぁ
」 若い男は顔色ひとつ変えることなく、むしろせせら笑いながら食事をしている『鬼』を眺めていた。
「もうちょっと霊力があればいいんだけどな」
若い男が『鬼』に手招きをすると、『鬼』たちは一斉に足元の影へと消えていった。

「ちょっと、食べさせるならもうちょっとキレイに食べさせるように教育させたら?」

若い男に声をかける、ゴシック系の服を身にまとった女らしき人物は、呆れた目線で男を見つめる。
「あはは、悪い悪い。こいつら根は悪くないんだけどよぉ」
「そういう問題じゃなくてよ」
女はため息をつきながら、手から炎を発生させ、放り投げるように死体へと発火させる。
「燃やすの、マズくね?」
「証拠を残すよりはいいですわ」
女は踵を返し、ゆっくりと歩き出した。
「厄介になる前に退散しましょ」
「はいはい」
若い男と女は、闇に溶け込むように消えていった―


翌日―

裏路地にて焼死体が発見されたと、ニュースで報じられた。
ニュースによると、何件も同様の事件が墨原市内で起こっており、警察に対する批判も相次いでいるという。
そして若者の間である噂がまことしやかにささやかれていた。

―霊力を狙う犯罪組織の仕業だ…と―



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